ミュージカルロマン 『夜霧のカルナバル』に寄せて
脚本原案・演出:三海 光
夜霧のカルバナルは、スペインの片田舎を舞台に、ある男女が出会い、織り成す恋を、
サスペンスを交えながら展開するスリリングな愛のドラマである。風輝さちさ・姫咲しほらの初顔合わせ公演にふさわしい作品にする為に、二人の多面的な魅力を、お客様に堪能していただく為の演出を随所に盛り込んだ。
まず、熱い芝居と卓越した歌唱力に定評のある風輝には、今回クールなCIA職員を演じてもらう。
仕事に忠実で自分の身すら省みない冷酷な男が、スペインの明るく陽気で力強い女性に恋をして職務と恋情の間で揺れ動く様を、そして恋が叶った時大切な人を守ろうとする姿、記憶を無くし彷徨う苦しみなど、彼女の感情を抑えた芝居がどのように観客のの感情を揺さぶるのか、今から楽しみである。
また、風輝の歌唱力を余すところなく発揮してもらう為に、今回は いのり氏にも楽曲の提供を依頼したところ快諾頂けた。
主題歌『ポラリス』は、首塚歌劇団史上に残るような名曲になるであろう事を確信している。
また、17場で風輝が歌い上げる、胸に染み入るような『夜霧のアマール』は、あくまで切なく観ている者の涙を誘うであろう。
そして、相手役を立てつつも自分自身も輝く稀有な娘役になるだろう新進の娘役 姫咲しほら。
私は、かつて彼女が「うん」という一言で演劇界を震撼させた新人の時から期待を寄せていたのが、彼女には更なる成長を期待して、華やかな前作からは一転。今回は粋で陽気な町娘の役を用意した。
冷たくされつつもニコラを一途に想い続け、恋が叶ったその瞬間にニコラを失うことになる悲愴さ。
そして、深い悲しみに負けずニコラを探し続ける健気さと情熱といった奥深い人間性の表現をしなくてはならない難しい役ではあるが、彼女の豊かな表現力ならば、私が想像する以上に素晴しいルイーゼになるだろう事を期待している。
また、最近ダンスの成長が著しい姫咲が、第14場のニコラを捜し求めるダンスシーンでは、幻想の中で恋への情熱、生きる喜びといった感情をどう表現するのか、楽しみである。
今回、原案者・演出家としてこの二人と仕事が出来た事は、とても喜ばしい事であった。この機会を与えてくれた首塚歌劇団には深く感謝している。
首塚歌劇団きっての美しいコンビが織り上げる素晴しい舞台をご堪能下さい。
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